
監修者
木村太一 / 留学FACTORY代表
フィリピンの語学学校へ現地就職。その後、旅系YouTuberとして毎年10カ国を回る。現在は旅系YouTuberの活動と並行して、手数料ゼロの留学エージェント「留学FACTORY」を運営。フィリピン・セブ島を中心に留学をサポート。
留学を考えている社会人
『フィリピンに3ヶ月行くんですけど、海外留学保険って入らないとダメですか? クレジットカードに付いているみたいだし、日本の健康保険もあるし、正直もったいない気がして…』
こういった疑問に答えます。
本記事では、フィリピン留学の準備を進めていて、海外留学保険に入るかどうかで迷っている方に向けて書いています。なお「海外留学保険」と「海外旅行保険」は、留学向けに売られているものも旅行向けに売られているものも、ケガ・病気・賠償・携行品などをまとめるという基本の枠組みは共通しています。この記事では、その共通する部分を扱います。
先に結論です。入っておいたほうがいいです。ただし理由は「何かあったときのため」という漠然としたものではなく、2つに絞れます。
1つは、フィリピンの病院では診てもらう前に診療費を払うか、払えることを示すよう求められること。もう1つは、日本の公的な医療保険から帰国後に戻る額が、現地で払った額ではなく「日本で同じ治療を受けたらいくらか」で計算されることです。
保険をもったいないと感じるのは、ケチだからではないですよね。何に備えるお金なのかが見えていないだけです。そこが分かれば、入るかどうかも、どれを選ぶかも自分で判断できます。
僕たちはフィリピンの語学学校で働いていた時期があり、イロイロ(パナイ島)には約2年、生活の拠点として住んでいたこともあります。そのうえで言うと、日本から来る人がいちばん想像しにくいのは、病気そのものよりも「病院でのお金の出し方」かなと思います。
なお、この記事では医療費や保険料の金額を書きません。金額は傷病の内容や為替で大きく動くので、代わりにお金の払い方と計算のされ方を説明します。これだけでも判断はできます。
海外留学保険で見るのは「入っているか」ではなく「その場で効く形か」
先に答えを書くと、確認するのは「保険に入っているかどうか」ではなく、フィリピンの病院の窓口で、その場で効く形になっているかどうかです。日本の公的な医療保険は「あとで一部戻る」側しか埋めていないからです。
日本の公的な医療保険には、海外で受けた治療の費用の一部が帰国後に戻る仕組みがあります。「海外療養費」と呼ばれる、日本の保険の加入者が緊急でやむを得ず海外の病院にかかったときの払い戻し制度です。これは実在します。「あるって聞いたけど」という人の記憶は間違っていません。念のため書いておくと、この仕組みは窓口での支払いを軽くするものではありません。いったん自分で払ったあとに申請して、一部が戻る形です。
ただしこの仕組みは、あとで一部戻る側にしかありません。その場で払う側は、この仕組みでは埋まりません。
そしてフィリピンの病院では、まさにその場で払えるかどうかを先に見られるのが一般的です。
海外留学保険は、この空いているところを埋めるために入ります。裏返して言えば、入らない場合は、その場の支払いを全額自分で用意して、帰国後に申請して一部だけが日本基準で戻ってくる、という形になります。しかもこの「一部戻る」は、制度を使える立場であれば、という条件つきです。ここは後半で説明します。以降はすべて、冒頭に挙げた2つの理由の詳細です。
理由①: フィリピンの病院は「払えることを示してから診察」です
先に答えを書くと、日本とは順番が逆です。フィリピンでは診てもらう前に払えることを示すよう求められるのが一般的なので、その一手間が、体調がいちばん悪い日に先に来ます。
日本の病院は「診てもらってから会計」ですよね。受付で保険証を出し、診察を受けて、最後に窓口で払う。この順番があまりに当たり前なので、誰も疑いません。
フィリピンは順番が違います。フィリピンでは医療機関を受診するとき、診療費の前払いか、支払える能力の提示を求められるのが一般的です。 現金、クレジットカード、保険証書のどれかを持っていくことになる、ということです。
この違いは、お金の話であると同時に時間の話でもあります。高熱が出た日や、犬に噛まれた直後に、「まず払えるものを用意する」という一手間が先に来る。体調が悪いときにいちばんやりたくない作業ですよね。
支払いの方法は病院ごとに違います
しかも受け付けてくれる支払方法は施設によって違います。クレジットカードが使えるところ、現金や銀行振込しか受け付けないところ、電子マネーだけのところ。日本のように「どこでもカードでいける」とは考えないほうがいいです。
つまりカードを1枚持っているだけでは、その病院で通用するとは限りません。現金・カード・保険証書のうち、どれで求められても動ける状態にしておくのが現実的です。
都市部と地方では医療の環境に差があります
同じフィリピンでも、都市部と地方では医療の環境に差があります。地方では施設の古さや衛生面の課題が指摘されていて、都市部と同じ水準とは言えません。
セブ島留学をしている間は、選択肢を取りやすい状態です。ただしどこで何が受けられるかは施設によって違います。日本語で頼める窓口を置いている病院もあります。これも無条件ではなく、頼む内容や加入している保険によっては別料金になることがあります。
週末に島や地方へ出かけたときは、この前提が変わります。移動先で何かあったとき、どこへ行き、どう払うか。ここまで含めると、保険は「病気になったときの割引券」ではなく、行ける病院の選択肢を減らさないための備えだと分かるはずです。
理由②: 戻るのは「日本で同じ治療を受けたら」で計算した額です
先に言うと、日本の公的な医療保険から戻る額は、フィリピンで実際に払った額の何割かではなく、日本で同じ治療を受けた場合の費用を基準に計算した額です。「日本の健康保険があるから、帰ってから3割負担にしてもらえるのでは」。これがいちばん多い誤解かなと思います。前述のとおり、帰国後に一部が払い戻される仕組み自体はあります。隠す話ではありません。問題は戻り方です。
現地で払った額の何割か、という計算ではありません
日本の公的な医療保険から戻る額は、日本国内で同じ傷病を治療した場合にかかる費用を基準に計算されます。 現地で実際に払った額のほうが少なければそちらが基準になり、そこから自己負担に当たる分を差し引いた額が戻ってきます。
日本と海外では医療の体制も治療の進め方も違うので、実際に払った額と、日本基準で計算した額にはずれが出ます。実際に払った額と日本基準で計算した額のずれは、そのまま自分の負担として残ります。 為替も、払い戻しが決まった日のレートで円に換算されます。
申請には現地の明細と日本語訳が要ります
戻してもらうには申請が必要です。公的な医療保険へ払い戻しを申請するときは、現地の病院に診療内容の明細と領収の明細を書いてもらい、外国語の書類には日本語の訳を添えて提出します。 訳した人の署名と連絡先も求められます。
留学が終わって、仕事や学校が再開してから、英語の明細の翻訳を用意している自分を想像してみてください。しかもこの払い戻しの申請には期限があり、治療費を支払った日の翌日から2年です。「帰ったらやろう」で放っておける作業ではありません。
さらにこの払い戻しは、治療を目的として渡航して受けた診療には使えませんし、日本で保険がきかない医療行為も対象外です。美容目的の施術などがこれにあたります。
そもそも制度を使える立場かが、人によって変わります
会社の健康保険なのか国民健康保険なのか、加入している保険の種類で扱いが変わります。住民登録を抜いて海外へ転出する届けを出すかどうかでも変わります。一方で、会社などの健康保険で家族の扶養に入っている学生については、一時的な留学であれば扶養のまま扱われる取り決めもありますが、現地で働き始めたときなど扱いが変わる場面もあり、最終的な判断は加入先です。
ここは記事の側で「あなたはこうなります」と断定できない部分です。社会人が自費で行く場合と、学生が親の扶養に入ったまま行く場合では前提が違うからです。だから出発前に、自分の加入先へ1回聞いてください。後半の「今日できる3つ」の1つ目がこれです。
では海外留学保険の何を見るのか: 値段の前に「項目」を見ます
ここまでで「入っておいたほうがよさそう」と思えたら、次は選び方です。フィリピン留学という条件で見ると、優先順位ははっきりしています。多くの人は保険料の安さから見に行きますが、先に見るのは金額ではなく、どの項目がどれだけ付いているかです。項目が分かっていないと、安いほうを選んだ理由を自分で説明できません。
海外旅行保険は、いくつかの補償を束ねた商品です。中身はおおむね次のように分かれています。
治療・救援費用が本丸です
留学でいちばん出番があるのがここ。「救援」は、自分の治療ではなく家族が現地へ来る側の費用のことで、商品によっては治療費用と救援者費用に分かれて書かれています。ケガや病気の治療にかかった費用に加えて、事故に遭ったときに家族が現地へ駆けつけるための交通費や滞在費も、この項目で扱われるのが一般的です。 名称も対象の範囲も商品ごとに違うので、契約する前に対象になっているかを見てください。
この後半を見落としている人が多いです。フィリピンは日本から行きやすい国ですが、急に飛行機を取って何日か泊まる、というのはまったく別の話ですよね。
補償を1つだけ選べと言われたら、ここを選ぶことになります。
賠償責任と携行品損害
賠償責任は、他人にケガをさせた、他人のものを壊した場合の補償です。留学中なら、借りている部屋の設備を壊した、自転車やバイクで人にぶつかった、といった場面が想像しやすいかなと思います。
携行品損害は、持っていったスマートフォンやパソコンを壊した・盗られた場合です。ここでひとつ、実際にあった話を書いておきます。僕たちはバコロドに10回ほど足を運んでいるのですが、なくしたiPhoneが手元に戻ってきた人がいます。 バコロドは治安がいい街です。とはいえ油断は禁物で、貴重品を人前で見せない・夜の一人歩きを避ける・移動は配車アプリのGrabで呼ぶ、この3つは続けたほうがいいです。携行品の補償は、この3つをやったうえでの最後の受け皿です。
どんな場面で被害が起きるかは「セブ島の治安は場所より場面|セブ島留学の安全対策3つ【2026】」でまとめています。
なお、壊した・盗られたときに何をそろえる必要があるかは、契約する保険の案内に書かれています。契約する前に、携行品の補償で何が求められるかまで見ておくと、いざというときに慌てずに済みます。
航空機の遅延と手荷物の遅延
飛行機が遅れて出発できなかった、乗り継ぎに間に合わなかった、預けた荷物が着かなかった。こうした場面で自分が負担した費用を見てくれる項目もあります。フィリピン路線は乗り継ぎを挟む行き方も多いので、出番がないとは言い切れません。
ただし優先順位は治療・救援費用のあとです。必要な補償だけを選んで契約できる商品もあるので、「全部入りにするか、入らないか」の二択で考えなくて大丈夫です。
ひとつだけ注意です。出番が少ない項目と、出番は少ないけれど外れたときに大きい項目は別物です。賠償責任は後者にあたります。外す判断をするなら、外した場合に何が自分に残るかまで見てから決めてください。
手持ちのカードで足りるかは、条件のほうを見ます
クレジットカードに海外旅行保険が付いている人も多いはずです。ここで確認するのは補償の金額ではなく、いま自分が持っているカードが、どういう条件で効くのか。条件は見直されることがあるので、昔調べた記憶や、人から聞いた話で判断しないほうがいいです。カード会社の現在の案内を見てください。
ここで言う「条件」は、効くための条件だけではありません。その補償が滞在の何日目まで続くのかも条件のうちです。短い旅行と数ヶ月の留学では、必要な期間がそもそも違いますよね。自分の滞在日数を横に置いて案内を読むと、足りているかどうかが分かります。
条件のタイプの違いや、いつまでに申し込めばいいか、カードを新しく作る場合にどれくらい待つかは「フィリピン留学の準備はいつから?【結論は条件と空室次第】」にまとめてあります。
保険料が留学の総額のどこに入るのかを知りたい場合は「フィリピン留学1ヶ月の費用は約29万〜44万円【2026年版】」を見てください。金額の話は、前提条件をそろえてそちらにまとめてあります。
その場で払わずに済む「キャッシュレス診療」もあります。ただし条件つき
保険によっては、この「その場で払う」部分を肩代わりしてくれる仕組みがあります。理由①で「フィリピンの病院は先に払えることを示すよう求められる」と書きましたが、その部分です。
この仕組みが付いた保険に加入している場合に限り、提携している病院で、その場で治療費を自分で払わずに診てもらえるというもので、キャッシュレス診療と呼ばれます。治療費は保険会社から病院へ直接支払われます。財布の中身を気にせず病院へ行ける、というのは思っている以上に大きいです。
ただし条件があります。使えるのは提携病院に限られます。支払いの対象にならない費用は自己負担です。処方された薬の代金と、通院のための交通費は、いったん自分で立て替えて帰国後に請求する扱いが一般的です。実際にかかった費用が契約の限度額を超えた分も、自分の負担になります。
そして、この仕組みは加入していれば自動的に使えるとは限らず、受診の前に保険会社へ連絡しておくことが前提になっている場合があります。そこが抜けると立て替えに戻ります。使い方の手順は、地方都市の医療と保険の話をまとめた「フィリピン地方都市留学のデメリット5つ|差は立て直す手数です」で詳しく書いているので、契約したらそちらを読んでおいてください。
繰り返しですが、「加入している」と「現地で使える状態にある」は別です。
海外留学保険の出番は、体調を崩したときと動物に噛まれたときです
ドラマみたいな大事故を想像する必要はありません。フィリピン留学中に病院へ行く理由として現実的なのは、体調を崩したときや、動物に噛まれたときです。
雨の多い時期は蚊が増えますし、雨の降り方は地域によっても違います。犬だけでなくコウモリやネズミなど、人にうつる病気を持っている動物もいます。動物に噛まれたら、様子を見ずにすぐ病院へ行くのが基本です。ここで「お金がかかりそうだから明日にしよう」と迷わずに済む状態を作るのが、保険の実用的な役目かなと思います。
かかりやすい病気と、渡航前に何を医療機関へ相談すればいいかは「フィリピン留学のデメリット|消せる7つと消えない3つに分けます」で扱っています。覚えてほしいのは病名ではなく、行くと決めたときにためらわない状態を先に作っておく、という考え方のほうです。
まとめ: 保険証書は、その場で払えることを示すための持ち物です
この記事で持ち帰ってほしいのは1つだけです。
保険証書は「あとで戻ってくる紙」ではなく、その場で払えることを示すための持ち物。 パスポートや現金と同じ列に置いて考えてください。頭の中の分類がここまで変われば、入るかどうかで迷う材料はかなり減ります。
そのうえで、今日できることを3つに絞ります。
- 自分が加入している公的な医療保険の種類と、留学中に資格がどうなるかを加入先へ確認する
- 手持ちのクレジットカードの付帯保険が、いまどの条件で効くのか、滞在の何日目まで補償が続くのかをカード会社の案内で確認する
- 検討している保険について、治療・救援費用の扱いと、滞在先に提携病院があるかを確認する
3つとも、調べるのは自分の状況についてだけです。
僕たち留学FACTORYは、手数料ゼロでLINE無料相談を受け付けています。セブ島留学の準備で、この3つのうちどれから手を付ければいいか分からない方は、滞在予定の期間と、加入している保険の種類を添えてご相談ください。一緒に整理できます。
「入ったほうがいいらしい」から「その場で効く形にしてある」へ。ここまで進めば、出発前に決めきれていない項目がひとつ減ります。記事下のLINE無料相談からどうぞ。
よくある質問
フィリピン留学に海外留学保険は必要ですか?
入っておいたほうがいいです。 理由は2つあり、フィリピンの病院では受診のときに診療費の前払いや支払能力の提示を求められること、日本の公的な医療保険から戻る額は日本で同じ治療を受けた場合を基準に計算されることです。日本の仕組みは「あとで一部戻る」側にしかないため、その場で払う側を埋めるものが別に要ります。入らないという選択をした場合は、現地での支払いを自分で全額用意し、帰国後に日本基準で計算された一部が戻るのを待つ形になります。この払い戻し自体、加入している保険の種類や住民登録の扱いによっては使えないことがあるので、出発前に加入先へ確認してください。
日本の健康保険証はフィリピンの病院で使えますか?
窓口での支払いを軽くする仕組みではありません。いったん自分で払い、帰国後に申請して一部が戻る形です。 戻る額は日本国内で同じ治療を受けた場合の費用を基準に計算されるため、現地で払った額との差は自分の負担になります。申請には現地の病院が書いた明細と日本語訳が必要で、支払った日の翌日から2年という期限もあります。
クレジットカードに付いている保険だけで足りますか?
金額ではなく、いまの条件を確認してから判断してください。 カードの付帯保険は効く条件がカードごとに違い、その条件は見直されることもあります。昔調べた記憶や人から聞いた話ではなく、カード会社の現在の案内を見るのがいちばん早いです。あわせて、その補償が滞在の何日目まで続くのかも見てください。滞在が長いほど、ここで差が出ます。条件と申し込みの期日は「フィリピン留学の準備はいつから?【結論は条件と空室次第】」にまとめてあります。
保険に入っていれば、現地で治療費を払わずに済みますか?
この仕組みが付いた保険に加入していれば、提携病院に限り、その場で払わずに診てもらえます。 治療費は保険会社から病院へ直接支払われます。ただし使えるのは提携病院に限られ、支払いの対象にならない費用は自己負担です。処方薬の代金と通院の交通費はいったん立て替えて帰国後に請求する扱いが一般的で、限度額を超えた分も自己負担になります。
保険で見るべき補償の項目はどれですか?
留学という条件で見ると、まず見るのは治療・救援費用です。 ケガや病気の治療費に加えて、事故に遭ったときに家族が現地へ駆けつける交通費や滞在費もこの項目で扱われるのが一般的です。ただし名称も対象範囲も商品ごとに違うので、契約前に確認してください。そのうえで賠償責任、携行品損害、航空機や手荷物の遅延といった項目があります。必要な補償だけを選んで契約できる商品もありますが、賠償責任のように出番は少なくても外れたときに大きい項目もあるので、外す判断は中身を見てからにしてください。
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